2025年4月1日から、日本の車検制度が変わります。主な変更は以下の2点です。
①車検を受けられる期間が「1か月前」から「2か月前」に拡大
改正の内容:受検期間が「1か月前」→「2か月前」に延長
【従来】
- 車検満了日の1か月前から受検可能
【改正後】
- 車検満了日の2か月前から受検可能
【自賠責保険の更新も拡大】
また、この改正に伴い、自賠責保険も有効期限の2か月前から「残存期間を活かしたまま」の更新ができるようになります。
メリット
- スケジュールの柔軟性向上: 車検の期限に追われにくくなります。忙しい方でも早めの時期に余裕をもって車検を受けられるようになり、出張や引っ越しなど満了日周辺に予定がある場合でも安心です。
- 混雑の緩和: ユーザー側も繁忙期を避けやすいため、3月末や月末直前の陸運局・工場の長い待ち時間が緩和され、結果的に手続きがスムーズになります。整備士さんの負担軽減にもつながり、サービス品質向上が期待できます。
- 車検切れリスクの低減: 仮に不具合が見つかっても、従来より早めに車検を受けていれば修理や再検査の時間的猶予が大きくなります。部品取り寄せや追加整備が必要になっても満了日までに対応しやすく、車検切れで車に乗れなくなる事態を防ぎやすくなります。
※満了日の2か月前以内で受ければ次回の満了日は変わりません。
②新たにOBD(車載故障診断装置)検査が追加
新制度ではOBDを使用し、電子制御装置の不具合を診断する検査が追加されます。
国産車は、2024年10月1日からすでに開始されています。
輸入車は、2025年10月1日から開始されます。
OBD検査とは
車検場や整備工場にて、まず車のダッシュボード下などにあるOBDポート(故障診断コネクター)に専用のテスター(検査用スキャンツール)を接続します。
整備工場ではすでにお馴染みの光景ですが、車のコンピュータに外部機器をつないでデータを読み出す作業です。診断機を通じて車載コンピュータに記録された故障コード(DTC)の一覧を取得し、検査システムのサーバーに送信します。もし該当するコード(重大な故障や排出ガス関連の異常を示すもの)があれば不合格、問題なければ合格となるという仕組みです。
OBD検査の対象車
- 2021年10月以降に新規型式認定された国産車
- 2022年10月以降に新規型式認定された輸入車
メリット
- 電子制御装置の故障を早期発見、安全性向上 OBD検査によってエンジンやブレーキ補助など重要な安全装置の不具合を見逃しにくくなるため、整備不良による事故を未然に防ぎやすくなります。ユーザー自身も気付いていなかった電子系のトラブルを指摘してもらえることで、安心して車に乗り続けることができます。
- 環境性能の維持: 排ガス関連のセンサー異常や触媒劣化などもOBDデータで検知されるため、排出ガス規制の適合性をより正確にチェックできます。違法な改造や故障により排ガスが基準を超えてしまっている車両を排除し、大気環境の保全につなげるメリットがあります。
- ユーザー意識の向上: 「電子制御も含めて車全体をちゃんとチェックしないと車検に通らない」という仕組みは、ユーザーに定期点検や日頃のメンテナンスの重要性を再認識させます。実際、2021年10月からは法定12か月点検の項目にもOBDチェックが追加されており、車検だけでなく日常的な整備で故障コードを確認する習慣が広まりつつあります。OBD検査導入はユーザーのメンテナンス意識向上にもつながっていくでしょう。
デメリット
- 検査費用が追加(具体的な費用は整備工場により異なる)OBD検査の導入により、車検費用が若干上がる可能性があります。検査そのものに関して国の定めた手数料(技術情報管理手数料として400円程度)も発生しますが、それ以上に整備工場でスキャン作業を行う手間賃が上乗せされるためです。実際の追加料金は業者にもよりますが、おおむね1,000~4,000円程度のアップになると見込まれています。
- 軽微な不具合でも修理が必要になる場合がある OBD検査で不具合コードが検出されると車検不合格となり、修理しない限り公道を走れません。従来なら見逃されていたような軽微なセンサー故障でも修理が必須になる場合があります。結果として追加の修理費用や整備にかかる時間の負担が生じる可能性があります。
まとめ
2025年4月から始まる新しい車検制度について、「2か月前車検」の制度はユーザーの利便性が高まる嬉しい改正です。次回車検が迫っている方は早めの準備や予約が可能になります。特に3月や年度末に満了日が来る場合は、前倒し受検を積極的に活用すると良いでしょう。前述のとおり不具合対応の猶予も生まれますので、早め車検で愛車のコンディションをチェックしておくのは得策です。
一方、「OBD検査」については安全・環境面で大きなメリットがある反面、ユーザーにも多少の負担増や注意点があります。最新モデルの車にお乗りの方は、日頃から警告灯の点灯を見逃さず不調を感じたら早めに点検に出すよう心がけましょう。車検証の備考欄に「OBD検査対象」の記載がある車は次回車検でコンピュータ診断がありますので、事前に修理工場にて故障コードをチェックしてもらうのも一つの手です。
新制度を正しく理解し、快適で安全なカーライフを送りましょう。